「行くだけ」で終わらせない。白浜町職員・鳴尾さんに聞く、白浜町が地域おこし協力隊DAOでつくった、関係人口の新しい入口

和歌山県白浜町では、あるやうむと連携した「地域おこし協力隊DAO」の取り組みが進んでいます。

地域おこし協力隊員・ゆうとさんを中心に立ち上がったLINEオープンチャット「シラハマニア」は、地域住民、観光客、白浜ファンがゆるやかにつながる場として広がり、現在(2026年4月時点)では600名以上が参加するコミュニティへと成長しました。企画提案、求人相談、起業相談といった具体的な動きも出始めています。

この取り組みの面白さは、単に「デジタルの新しい施策を導入した」ことではありません。地域おこし協力隊を1人の採用で終わらせず、地域の中と外をつなぐ“関係人口の土台”として活用しているところにあります。

今回は、白浜町職員の鳴尾さんに、導入前の課題、実際に起きた変化、行政の関わり方、そして他自治体への示唆について伺いました。

観光地・白浜町が求めていたのは、「来てもらう」先の関係づくりだった

まず、白浜町が地域おこし協力隊DAOを取り入れた背景から教えてください。

鳴尾さん:
白浜町は観光の町なので、いろんな人に来てもらって、地域で活動したり関わったりしてもらうことがすごく大事なんです。

ただ、それと同時に若者の県外流出という課題もありました。若い人に入ってきてもらって、地域に定着して、そこから新しい取り組みにつながっていけば、という思いがありました。

DAOを選んだ理由は、技術の新しさより「外の声が入る場」をつくれること

導入してみて、どんな変化を感じていますか。

鳴尾さん:
地域でも「シラハマニア」という名前を聞くことが出てきました。

コミュニティの中では、地域の人と外部の人が分け隔てなくつながれている。中だけで閉じて考えるのではなくて、外からの意見をフラットに取り入れられる場ができたのは大きいと思っています。

実際、「シラハマニア」は2025年4月に立ち上がった白浜ファン向けのデジタルコミュニティで、LINEオープンチャットでの交流に加え、同年5月にはWebメディアも開設されました。観光・イベント情報の共有にとどまらず、参加者は600人を超え、地域のイベント情報の発信や地域課題にも関わる場として育っています。

NFTやDAOといった言葉への不安はありませんでしたか。

鳴尾さん:
正直ありました。

ただ、NFTやDAOそのものが目的じゃないとも思っていました。

理想は、気づいたら自然に使っているくらいの状態です。

デジタルで完結させるんじゃなくて、現地に来てもらうためのツールとして使えたらいいと考えています。

コミュニティの価値は、人数ではなく「その場で何が起きたか」に表れる

シラハマニアができて、具体的に価値を感じた出来事はありますか。

鳴尾さん:
印象に残っているのは、旅行で来たご家族が「子どものパンツを忘れた」と投稿した時のことです。するとすぐに地元の方が

「この店に行ったら売ってるよ」

と返してくれて、その後に

「買えました、ありがとうございます」

と続いたんです。それを見た時に、いいコミュニティだなと思いました。

変化はそれだけではありません。ホテルのランチやデザートフェアのように、普段は一部にしか届かない情報がコミュニティ経由で広がったり、個別のプロジェクト部屋で「バリアフリーマップを作ろう」といった話が動き出したりもしているそうです。人数の多さ以上に、地域内外の参加者が“自分ごと”として動き始めていることが、この取り組みの本質なのかもしれません。

行政は前に出すぎない。それでも、必要なときはきちんと支える

役場としては、どのくらい深く関わっているのでしょうか。

鳴尾さん:
普段は見守っている感じです。

行政として手を入れすぎたくないという思いがあります。

ただ、ちょっと対応が必要な人が出てきたときや、役場として返した方がいい内容のときは、裏で方針を伝えたり、必要なら役場として回答したりしています。

評価されたのは「既存業務の代行」ではなく、「今まで動いていなかったこと」が動き出したこと

ゆうとさんが来てくれて、助かっていることは何ですか。

鳴尾さん:
職員が本来やるべき仕事を外に任せている、という感覚ではないんです。

ただ、そもそもやっていなかったことを今やってくれている。

コミュニティの維持もそうだし、地域イベントの運営補助もそう。FM放送局でパーソナリティもやってくれていて、そういう部分はすごく助かっています。

なぜ、ゆうとさんだったのか。白浜町が見ていたのは“デジタル人材”かどうかだけではない

ゆうとさんが地域で動けている理由は、どこにあると思いますか。

鳴尾さん:
面談のときに、DAOとかWeb3、デジタルの文脈でありながら「リアルが大事です」と話していたんです。

そこが、自分たちの考え方とすごく合っていました。

最初は町としていろんな方につなぎましたけど、その後はイベントに関わる中で、本人がどんどん広げていってくれました。

白浜町が他自治体に伝えたいのは、「重たいミッション」だけが協力隊ではないということ

最後に、これから導入を検討する自治体に伝えたいことはありますか。

鳴尾さん:
地域おこし協力隊というと、

農業や一次産業など重たい役割を期待しがちだと思います。

でも白浜では、もっとライトに、ゆるい関係人口を大きく広げていく視点で取り組んでいます。そういうやり方が合う地域もあると思います。

まとめ

白浜町の事例は、Web3やDAOという新技術を導入した話というより、観光地が「また来たい」「少し関わりたい」を積み上げるためのインフラをどう持つか、という話に近いのかもしれません。1人の協力隊員を起点に、地域内外の人がつながる場をつくる。重いミッションをいきなり背負わせる前に、まずは関係人口の土台からつくりたい。そんな自治体にとって、白浜町の実践はかなり参考になるはずです。

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