「観光客は年間300万人以上来てくれる。でも、”白浜のファン”は何人いるだろう?」
温泉、白良浜、アドベンチャーワールド、和歌山県白浜町は観光資源に恵まれた町です。一方で、観光客の多くは訪れて帰るだけで、「白浜の情報を日常的に追いかけたい」「町を応援したい」という継続的な関係にはなかなかつながっていませんでした。
2025年4月、白浜町は関西初の「地域おこし協力隊DAO」の取り組みをスタートしました。
DAOマネージャーとして着任したゆうとさんが立ち上げたLINEオープンチャット「シラハマニア」は、8ヶ月で参加者500名を突破。白浜町の公式サイトにも紹介ページが設けられる町公認のコミュニティに成長しています。
この記事では、白浜町の概要と課題、地域おこし協力隊DAOを導入した背景、そしてゆうとさんとシラハマニアの全体像をご紹介します。

和歌山県白浜町の魅力
白浜町は、和歌山県の南西部・太平洋に面した人口約1万9千人の町です。
大阪から車で約2時間、南紀白浜空港から東京へは約1時間10分というアクセスの良さも特徴のひとつ。
白良浜は延長約620mの白い砂浜が広がるビーチで、夏場は毎年60万人以上の海水浴客が訪れます。町内には日本三古湯のひとつに数えられる白浜温泉があり、アドベンチャーワールドには年間を通じて多くの家族連れが足を運んでいます。
近年はIT企業のサテライトオフィス誘致にも力を入れており、町内には東京などから進出したIT企業が16社。ワーケーションの先進地としても注目される、観光と産業が交差する町です。


「来てくれるけど、関係が続かない」という課題
白浜町は年間300万人を超える観光客が訪れる、いわば”集客力”のある町です。
しかし、その多くは「白良浜で泳ぐ」「温泉に入る」「パンダを見る」という体験をして帰っていく。観光客にとって白浜町は「楽しかった場所」ではあっても、「いま何が起きているか気になる場所」にはなりにくい構造でした。
さらに2025年6月には、アドベンチャーワールドのパンダ4頭が中国へ返還されるという大きな出来事がありました。アドベンチャーワールドの来園者は年間約90〜120万人、そのうち約2割がパンダ目当てとされており、「パンダの町」のイメージが薄れた後をどうするかは、白浜町にとって避けられないテーマです。
ゆうとさんの着任はパンダ返還の直後、2025年8月のこと。着任のきっかけはパンダの問題ではありませんが、結果的に「パンダに頼らない白浜ファンをどう育てるか」という町全体のテーマと、ゆうとさんの活動が重なることになりました。
こうした背景の中、白浜町が新しいアプローチとして導入したのが、あるやうむの「地域おこし協力隊DAO」でした。

なぜ白浜町が「地域おこし協力隊DAO」を導入したのか
白浜町が地域おこし協力隊DAOを導入した背景には、観光地ならではの課題がありました。
年間300万人が訪れるとはいえ、夏場やパンダ関連に集中しがちで、平日やオフシーズンの誘客は長年のテーマ。加えて、ワーケーションの先進地として関東圏からの新しい人の流れをどうつくるかも大きな関心事でした。
白浜町の大江康弘町長は、導入にあたってこうコメントしています。「白浜町の豊かな自然と温泉、そして地域の温かさを基盤に、今後は最先端のweb3技術を活用して、新しい形での地域づくりに挑戦してまいります。特に、平日やオフシーズンでの誘客、ワーケーション施策を通じた関東圏からの誘客向上に大いに期待しています」。
つまり白浜町にとって、この取り組みは「観光客をもっと呼ぶ」施策ではなく、「すでに来てくれている人との関係を育て、まだ来ていない時期にも足を運んでもらう」施策。
デジタルとリアルを結びつけ、白浜を訪れる人により多様で豊かな体験を届けること。それが、地域おこし協力隊DAOに期待された役割でした。
余市町のmachiDAOが「ふるさと納税の寄付者を余市ファンに変える」仕組みだとすれば、白浜町のシラハマニアは「観光客を白浜ファンに変える」仕組みとして設計されています。
DAOマネージャー・ゆうとさんの紹介
2025年4月、白浜町のDAOマネージャーとして着任したのが、ゆうとさんです。

ゆうとさんは東北の出身。
NFTの情報発信に携わった経験があり、SNSでの発信のコツを実践の中で身につけてきました。
白浜に移住してからは、
「全部が初めて知ること。それをちょっと面白く言ったら、だいたいコンテンツになる」
という感覚で、関西の文化や白浜の日常を発信しています。
着任後は、コワーキングスペースに毎日のように通い、地域のイベントに積極的に顔を出す中で、自ら事業者や住民との関わりを広げていきました。「誰とでも分け隔てなく接する」という本人の性格もあり、SNSやオープンチャットで相談が来れば基本的に会いに行く。そうした姿勢が人から人へとつながりを生み、着任1年目にして「白浜を盛り上げてくれてありがとう」と声をかけられる関係性を築いています。

シラハマニアとは?
ゆうとさんが白浜町で立ち上げたのが、LINEオープンチャット「シラハマニア」です。
「シラハマニア」の名前は「白浜」と「マニア」を掛け合わせた造語。もともとは「しらハブ(仮)」という仮称で立ち上がったコミュニティでしたが、DAOらしくメンバーからの名称案を募り、投票で決まったのがこの名前でした。白浜が好きな人、興味がある人、関わり続けたい人——そんな”マニア”たちが気軽に集まれる場所、というコンセプトです。
シラハマニアは2025年4月のグランドオープンからわずか約8ヶ月で参加者500名を突破し、2026年2月時点では約580名の規模に成長しています。
白浜町の公式サイトにもシラハマニアの紹介ページが設けられており、町公認のコミュニティとして位置づけられています。
活動の場はオンラインとオフラインの両方。LINEオープンチャットでの日常的な情報交換に加え、noteで記事を発信する「シラハマニア|白浜情報」というWebメディアも運営。さらに独自ドメイン「shirahamania.com」も取得し、複数のプラットフォームから白浜の情報にアクセスできる体制を整えています。

まとめ「来てくれる人」を「関わり続けてくれる人」に変える挑戦
2025年4月、関西初の地域おこし協力隊DAOとして白浜町でシラハマニアが誕生しました。
年間300万人が訪れる観光地・白浜が抱えていた「観光客との関係が一度きりで終わる」という課題に対して、ゆうとさんはLINEオープンチャットを中心としたファンコミュニティという新しいアプローチで挑んでいます。
次の記事では、シラハマニアがどのようにして半年で500名を突破したのか。コミュニティの設計思想と、メンバーから自発的に生まれたプロジェクトの具体例をお伝えします。

