「行くだけ」で終わらせない。白浜町職員・鳴尾さんに聞く、白浜町が地域おこし協力隊DAOでつくった、関係人口の新しい入口

和歌山県白浜町とあるやうむの接点は、2023年の「ふるさとCNP」にさかのぼります。

その後、2024年8月には関西初の「地域おこし協力隊DAO」の取り組みがスタート。2025年4月にはDAOマネージャー・ゆうとさんがLINEオープンチャットを活用したコミュニティ「しらハブ(仮)」を立ち上げ、のちに「シラハマニア」へ発展しました。

5月にはウェブメディアも始動し、12月には登録者500名を突破。白浜町ではいま、観光客、地域住民、白浜ファンがゆるやかにつながる新しい関係人口の基盤づくりが進んでいます。

今回話を伺ったのは、白浜町で長く企画部門に携わり、「ふるさとCNP」から「地域おこし協力隊DAO」まで一連の流れを見てきた鳴尾さんです。白浜町はなぜこの取り組みを導入したのか。行政はどこまで関わり、何が変わったのか。現場の実感を、率直に語っていただきました。

「観光の町」だからこそ、外から関わる人を増やしたかった

まず、白浜町が地域おこし協力隊DAOを取り入れた背景から教えてください。

鳴尾さん:
白浜町は観光の町です。
だからこそ、いろんな人に来てもらい、地域で活動したり関わったりしてもらうことが大事でした。

一方で、若者の県外流出という課題も大きかった。

若者を呼び込み、地域に定着してもらいながら新しい取り組みにつなげる手段として、地域おこし協力隊DAOに可能性を感じました。

DAOを選んだ理由は、技術の新しさより「外の声が入る場」をつくれること

――導入してみて、どんな変化を感じていますか。

鳴尾さん:
地域でも「シラハマニア」という名前を聞くことが出てきました。

コミュニティの中では、地域の人と外部の人が分け隔てなくつながれている。中だけで閉じて考えるのではなくて、外からの意見をフラットに取り入れられる場ができたのは大きいと思っています。

実際、「シラハマニア」は2025年4月に立ち上がった白浜ファン向けのデジタルコミュニティで、LINEオープンチャットでの交流に加え、同年5月にはWebメディアも開設されました。観光・イベント情報の共有にとどまらず、参加者は600人を超え、地域のイベント情報の発信や地域課題にも関わる場として育っています。

――NFTやDAOといった言葉への不安はありませんでしたか。

鳴尾さん:
正直ありました。ただ、NFTやDAOそのものが目的じゃないとも思っていました。理想は、気づいたら自然に使っているくらいの状態です。デジタルで完結させるんじゃなくて、現地に来てもらうためのツールとして使えたらいいと考えています。

コミュニティの価値は、人数ではなく「その場で何が起きたか」に表れる

――シラハマニアができて、具体的に価値を感じた出来事はありますか。

鳴尾さん:
印象に残っているのは、旅行で来たご家族が「子どものパンツを忘れた」と投稿した時のことです。
するとすぐに地元の方が

「この店に行ったら売ってるよ」

と返してくれて、その後に

「買えました、ありがとうございます」

と続いたんです。それを見た時に、いいコミュニティだなと思いました。

このエピソードが象徴しているのは、コミュニティが“交流の場”で終わっていないことです。観光客の困りごとに地域の人が応える。そこで終わりではなく、感謝が返ってくる。観光地にとっては、来訪体験の満足度を高める「見えない接客インフラ」が地域の中に生まれた、とも言えます。

変化はそれだけではありません。ホテルのランチやデザートフェアのように、普段は一部にしか届かない情報がコミュニティ経由で広がったり、個別のプロジェクト部屋で「バリアフリーマップを作ろう」といった話が動き出したりもしているそうです。人数の多さ以上に、地域内外の参加者が“自分ごと”として動き始めていることが、この取り組みの本質なのかもしれません。

行政は前に出すぎない。それでも、必要なときはきちんと支える

――役場としては、どのくらい深く関わっているのでしょうか。

鳴尾さん:
普段は、ただ見ているだけです。しかし、少し対応に困るような状況になれば運営にアドバイスしたり、内容によっては役場として回答したりしています。行政の手を入れすぎないことは意識しています。

評価されたのは「既存業務の代行」ではなく、「今まで動いていなかったこと」が動き出したこと

――地域おこし協力隊DAOを入れて、職員として助かったことはありますか。

鳴尾さん:
直接、職員がやらないといけないことを任せているわけではないんです。

でも、「そもそもやってなかったこと」を今やってくれている。

コミュニティの維持もそうだし、地域イベントの運営の手伝いもそう。FMのパーソナリティもやってくれていて、そこは助かっています。

なぜ、ゆうとさんだったのか。白浜町が見ていたのは“デジタル人材”かどうかだけではない

――ゆうとさんが地域で動けている理由は、どこにあると思いますか。

鳴尾さん:
面談の段階で、「DAOとかWeb3、デジタルの文脈でありながら、リアルが大事」と話していて、そこが自分と同じ考え方でした。

最初は町側で地域の方々につなぎ、その後はイベントに関わる中で、本人が広げていってくれました。

白浜町が他自治体に伝えたいのは、「重たいミッション」だけが協力隊ではないということ

――最後に、これから導入を検討する自治体に伝えたいことはありますか。

鳴尾さん:
地域おこし協力隊というと、農業や一次産業など重たい役割を期待しがちだと思います。でも白浜では、もっとライトに、ゆるい関係人口を大きく広げていく視点で取り組んでいます。そういうやり方が合う地域もあると思います。

まとめ

白浜町の事例は、Web3やDAOという新技術を導入した話というより、観光地が「また来たい」「少し関わりたい」を積み上げるためのインフラをどう持つか、という話に近いのかもしれません。1人の協力隊員を起点に、地域内外の人がつながる場をつくる。重いミッションをいきなり背負わせる前に、まずは関係人口の土台からつくりたい。そんな自治体にとって、白浜町の実践はかなり参考になるはずです。

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