前回の記事では、machiDAOのトークンエコノミーが動き始めた経緯と、リワード第1号が熊本に届いたエピソードをお伝えしました。
今回は、hiroさんの活動が余市町のローカルな現場を超えて国際舞台に届いた話——
そして、約2年間の取り組みの全体像を振り返ります。ビーチクリーンで汗を流していた人が、数ヶ月後に世界中のブロックチェーン開発者の前でスピーチをしている。そんなことが本当に起きるのか?
起きました。

余市の海岸から、Ethereumの国際舞台へ
2025年9月16日〜19日、国際カンファレンス「EDCON」(Community Ethereum Development Conference)が開催されました。Ethereum共同創設者のVitalik Buterinも登壇する世界最大級のブロックチェーンイベントです。
このステージで、hiroさんはmachiDAOの活動と日本の地方DAOモデルについてスピーチを行いました。
きっかけは、親交のある「おさかなDAO長崎」のファウンダー・maipさんの登壇を知ったこと。当初は参加予定がなかったhiroさんですが、「自分もmachiDAOの活動を紹介したい」と応募し、スピーカーとして採択されています。
実はhiroさんにとって国際カンファレンスの場は初めてではありません。前年の東京開催では、pNouns DAOの活動としてブースの手伝いや登壇を約1週間にわたって経験していました。Nouns DAOという国際的なコミュニティで培ったネットワークと信頼関係があったからこそ、「余市の地域おこし協力隊員がEDCONで話す」という一見異色の組み合わせが実現しました。

「地域×DAO」は世界に届くのか
スピーチのテーマは「machiDAOの活動紹介」。具体的には、トークンやNFTの活用事例、毎週のワークショップ、オンラインとオフラインを掛け合わせたリアルイベントの実践について紹介しました。
登壇のタイミングはVitalik Buterinの講演と重なっていたため、大勢の聴講は見込めない状況でした。加えて海外の参加者にとって、日本独自の「地域おこし協力隊」の制度はなじみがない。伝わるだろうか——そんな不安もあったといいます。
しかし実際には、聴いていた参加者から大きなリアクションでの好意的な反応がありました。抽象的に語られがちなDAOの概念を、「人口約1万7,000人の町で実際に動いているコミュニティ」という具体例で示したことが響いたのでしょう。
聴いてくださった方の中から大きなリアクションで「良かったよ!」というジェスチャーをいただく場面もありました。
「点」が「面」に、「面」が「世界」につながった2年間
2024年4月にmachiDAOが誕生してから約2年。この間のhiroさんの活動には、明確な軌跡があります。
着任してまず向かったのは余市の海岸。半年で約10回のビーチクリーンを定番化し、遠方メンバーのリモート参加という仕組みも生み出しました(余市町広報誌掲載)。坂口恭平さんへのXスペース直談判から実現した展示&ライブは2日間にわたり、告知スペースに500人超のリスナーが集まっています。スマホ・パソコン相談会cafeには第1回で約30名が参加(余市町広報誌掲載)。ふるさと納税ウイスキーオーナー向けイベントでは7名が来訪し(余市町広報誌掲載)、DAOコミュニティ余市ツアーではオンラインの仲間が初めて余市の地を踏みました。トークンエコノミーが始まり、EDCONの国際舞台へ。
余市の海岸で始まった活動が、町内のリアルな現場、全国のオンラインコミュニティ、そして世界へと段階的に広がっていった2年間でした。
なぜ「1人の隊員」からここまで広がったのか
これだけの活動が展開できた理由を、「hiroさんが優秀だから」で片付けてしまうのは簡単です。
しかし本質はもう少し構造的なところにあります。
地域おこし協力隊DAOの仕組みは、隊員1人の活動を「点」で終わらせません。
Discordというオンラインの場があることで、全国のメンバーの知恵と行動力を巻き込める。坂口恭平さんのイベントはメンバーの「やりたい」が原動力でしたし、ビーチクリーンのリモート参加は離れた場所にいる仲間の自発的な提案から生まれました。
もうひとつ重要なのは、活動がデジタル上に「記録」として残り続けること。Discordのログ、SNSでの発信、トークンの取引履歴——これらは隊員の任期が終わっても消えません。次の隊員が引き継げる「資産」として蓄積されていく設計です。
2026年、machiDAOの次のステージ
machiDAOの公式アカウントでは、2026年に民泊事業をスタートする計画が発表されています。
DAOツアーやふるさと納税イベントを通じて余市を訪れるメンバーが生まれてきた今、「泊まる場所」の選択肢を増やすことは自然な進化です。単なる宿泊施設ではなく、「machiDAOメンバーが余市に帰ってくる場所」として機能すれば、関係人口はさらに深い形で定着するでしょう。
地域おこし協力隊の任期は最長3年。任期終了後の生業として、活動中に築いたコミュニティとネットワークを活かした事業が立ち上がることは、制度全体にとっても大きな成功モデルになり得ます。
→ 前の記事:【余市町】「活動したらTシャツがもらえる」DAOトークンが回し始めた小さな経済圏(実績・事例紹介⑦)
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