世界初の地方自治体によるNFT活用
尾鷲から始まった「カーボンクレジット✖️NFT」
今回は、三重県尾鷲市から始まった世界初の地方自治体によるNFT活用の取り組みについてご紹介します。
このプロジェクトは、ユーザーがデジタルアートを保有することで、気候変動問題の解決に寄与する「SINRA(シンラ)」というプロジェクトの一環として始まりました。
私も先日、このプロジェクトの現地フィールドワークに参加してきましたので、そのリアルな情報をお届けしたいと思います。
尾鷲はどんなところ?
三重県尾鷲市は、実は日本でもっとも降雨量が多いところだそうです。
そして、面積の92%が森林に覆われていることから林業で栄え、日本農業遺産にも認定されている尾鷲ヒノキは、2016年のG7伊勢志摩サミットで、首脳会議用テーブルにも採用されました。
また、リアス式海岸による豊かな漁場があり、定置網漁業なども盛んです。
このように森と海の自然豊かな美しい地域ですが、多くの地方が抱える人口減少、高齢化、空き家率増加といった社会課題に、この尾鷲市も直面しています。
現在、尾鷲市の人口は約15,000人で、この40年でほぼ半減、高齢化率も年々増加し2020年には45%に達しました。
(出典:「尾鷲市人口ビジョン」)
ところが、こんな一見すると新しいテクノロジーとは縁遠そうな尾鷲が今、NFTとカーボンクレジットを結びつけた環境保全の取り組みという、地方自治体としては世界初の先進的なプロジェクトをスタートさせたのです。
SINRAプロジェクトについて
プロジェクト概要
SINRAという名前は「森羅万象」が由来で、自然資本の豊かな価値を再生したいという想いから生まれたそうです。
SINRAの販売する「Regenerative NFT」を購入することで、個人でもカーボンクレジットを保有することができ、NFTの販売によって生まれた利益は、自然資源の再生や地域に還元されます。
このNFTを保有し、自然資源の再生に貢献する人は「SINRANIA」と呼ばれており、私自身も今回SINRANIAとして尾鷲のフィールドワークに参加しました。
最初はちょっとした興味本位で購入したNFTでしたが、そのことでカーボンクレジットなどの環境問題により関心を持つようになり、自分も何か価値創出に貢献したいと思うようになりました。
カーボンクレジットとは
最近は耳にすることも多くなったカーボンクレジットですが、CO2などの温室効果ガスの排出削減量をクレジットとして認証するもので、以下のように分類されます。大きくは国連・政府主導と民間主導とに分かれ、さまざまな制度が存在しています。
2023年10月には、東京証券取引所にもカーボン・クレジット市場が開設されましたが、取引量はまだまだ少ないようです。
(出典:「カーボン・クレジット・レポートの概要」)
Regenerative NFTとは
SINRAのRegenerative NFTは、以下4つの特徴があり、NFTの保有を通して、コミュニティ、環境保護、地方創生など、さまざまな文脈で、新しい体験を提供してくれます。
- ジェネラティブアート
購入するタイミングと量(カーボンクレジットのトン数)によってNFTの画像が変わります。
トン数が増えるほど、蝶がまとうお花も増えていきます。
NFTは、こちらのサイトから購入可能です。
(2023年12月現在、1tあたり0.03ETHとなっています。)
- コミュニティ参加
SINRANIA(Regenerative NFTを保有し、自然資源の再生に貢献する人たち)は、リアルでは現地フィールドワークに参加したり、Discordで相互のコミュニケーションをとることができます。
なお、SINRAのDiscordは、こちらからSINRANIA以外も自由に参加できます。
(現在、毎週火曜にコミュニティコールを行なっており、こちらも誰でも参加可能です。)
- 自然資源由来カーボンクレジット
Regenerative NFTは自然資源の増幅により生み出された環境価値(カーボンクレジット等)を表章しています。
企業は、生み出されたカーボンクレジットを自社の温室効果ガス削減目標に充てることができます。
個人は、生み出されたカーボンクレジットを使った地域・企業との連携による新しい体験やつながりを楽しむことができます。
- ソーシャルインパクト
自然資源の維持・再生に資金が流通することで、日本の各地域の活性化や生物多様性等にインパクトを与えることができます。
Regenerative NFTに紐づけること等により、貢献のインパクトを見える化していきます。
おわりに伝えたいこと
やっぱり人に尽きる
尾鷲の森や海などの自然は本当に心を打つほどに美しく、それに加えて、NFTといった新しいテクノロジーを活用した取り組みは、心躍るわくわく感を掻き立てられるもので、今後の展開も楽しみでなりません。
でも私が一番心惹かれたのは、何よりも尾鷲に集う人びとです。
このプロジェクトは、尾鷲市の職員の方が中心に取り組んでいるのですが、その熱量の高さは、一般的な行政の方のイメージとは思えないものでした。
それは、職務を超えて強いミッションに突き動かされているようで、生まれ育った尾鷲への深い愛情の現れのように感じました。
絶品のお刺身がつなぐコミュニティ
尾鷲の最終日に、通りすがりの喫茶店に立ち寄ったのですが、トーストとコーヒーとともに出てきたのは、朝獲れたての絶品のお刺身でした。
ご近所の常連さんが集うその喫茶店に、明らかによそ者の私が登場したのですが、突如「お刺身食べる?」と聞かれて、お客さんで来ていた漁師さんが、獲れたてのお刺身をその場で捌いて出してくれたのです。
その美味しかったことと言ったら、トーストとコーヒーとの食べ合わせなんて気にならないくらい絶品でした。
その後もほろ酔い漁師さんと語らいつつ、お土産までいただいて名残惜しく尾鷲をあとにしました。
ご近所さんにとっては当たり前の日常は、絶品のお刺身がつなぐ都会では得難いような人と人との緩やかなつながりでした。
そして私は、これが尾鷲の自然資産に勝るとも劣らない確かな価値だと実感しました。
また来年も、尾鷲で新しい価値に出会えるのを楽しみにしたいと思います。
sabii
メタバース在住。
VRゴーグル塩漬け民を救うプロジェクト(略して、ひげ部)
始めました。
最近は、360°カメラを手に、VR旅行を企画しています。