【牡蠣NFT】 NFTによる生産者と消費者の「牡蠣経済基盤」の可能性

地方創生Web3研究所の2つ目の記事はアビクリでおなじみのAbyssCryptoについて取り上げます。今回はファウンダーのなおきちさんに直接インタビューした内容を中心として、取り組みのきっかけから、NFTでこれまでに変わった効果などについて紹介していきます。

地方創生Web3研究所は、NFTを中心としたWeb3関連の技術や考え方が地方地域にどのような可能性や活用の方法があるのかを、全国各地の取り組みを参考に取り上げるメディアです。

牡蠣NFTとは?

牡蠣NFTとは漁師の日常をモチーフとして描かれたNFTボクセルアートのことです。正式名称は「AbyssCrypto」で、abyssが「深海」という意味で、深海にいるかのように注目されることがない水産業をNFTを通して、深海から海面に押し上げる意味が込められています。

AbyssCriptoのOpensea

abysscriptoが解決する水産業の課題は大きく3つあります。


薄利なビジネス
生産者から仲介業者を通して、市場やスーパーに流通される、現状のビジネスモデルでは生産者の手元に残る利益が少ない課題
広告宣伝
水産業界では、そもそもSNSの使い方がわからない方や、やってみたがなかなか伸びないといった課題
新鮮で美味しい牡蠣が一般の人々に伝わらない
後継者不足
水産業は「きつい、汚い、危険」の3Kが揃っており、漁師になりたいと思う若者が少ない現状
黒字の利益を上げていても後継者不足により倒産する企業がある課題

水産業の中でもまずはじめに、牡蠣業界の存続をかけた新しい取り組みとして始まりました。

なおきちさんとは?

牡蠣若手の会をはじめ、ECサイトの運営、AbyssCriptoと幅広く活躍されているなおきちさんですが、もともとは商社で医療機器のマーケティングを担当していたそうです。
そこから、牡蠣との出会いは日本国内ではなく、カナダのトロントに留学に行ったときにオイスターバーで仕事を募集していて、それに応募したことだったといいます。もともと、北海道の大学で、海洋学を勉強していて、ある程度の牡蠣に関する知識があった中で、エンターテイメントに寄せて面接に受けてみたところ、好印象に受け取ってもらえて、働くことになった経緯がありました。

お店での仕事を通して、牡蠣に触れる機会が多くなり、知識も増えました。世界では、日本で食べている牡蠣とは全く違う牡蠣があることに気づき、もっと世界の人々に牡蠣の美味しさを知ってもらいたいと思ったことが今の事業につながっています。

商社に入ったのも、輸出業を最初に学んでおけば、自分でも牡蠣の魅力を世界に届けることができると思ったからだそうです。

NFT×牡蠣にいたるまで

投資をやっていたこともあり、NFTが話題になったときに調べ始めたときに、NFTやブロックチェーンの可能性というものを感じ、牡蠣とNFTを絡めることを着想しました。

牡蠣の水産業者さんとのつながりはもともとなかったものの、2021年の10月くらいからインスタグラムを中心に牡蠣に関する発信を個人で行っていたそうで、「日本の美味しい牡蠣はここ!」のような投稿をしていたところ、牡蠣漁師からDMが届くようになり、日本全国の6箇所の牡蠣の水産業者さんとのネットワークができました。

そこから牡蠣NFTになるまでには、4ヶ月ほどででたどり着いたそうです。

なぜNFTだったのか

牡蠣の水産業者さんと関わる中で、それぞれに共通していることは、「もっと牡蠣を沢山の人に届けたい」「牡蠣のファンを増やしたい」の2つの想いです。しかし、どの事業者さんもでもどうしたらいいのかわからないという問題を抱えていたり、実際にSNSをやってみても伸びないといった課題に直面していました。そこで、新しい挑戦を断る理由もなかったことから、「ひとまず牡蠣NFTをやってみよう」と、挑戦が始まりました。

現状のビジネスモデルを打開するための一つとして、牡蠣NFTの活用をはじめました。これまでのビジネスモデルはスーパーに出すことや、飲食店に出すような販路が一般的でしたが、それが今は限界に来ています。「ボリュームを出すから安く買わせてくれ」の価格競争が起きている、物価は上がるが賃金は上がらない今の日本の社会構造で、どうやって新しい販路を開拓するかが課題でした。

それに関しては*1 DtoCがいいというのは牡蠣水産業者の中で共通認識としてあって、産地直送でより新鮮な牡蠣を届けることができるだけではなく、新しいビジネスモデルを構築できる可能性がありました。

*1 DtoC(D2C)とは、Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の略で、自社のECサイトなど活用し、仲介業者を介せずに直接顧客販売するビジネスモデルを指します。

NFTの設計で大切にしたこと

一番は、NFTを利益の中心にしないこと。いまのNFTプロジェクトの多くは、NFTを売ることで利益を上げようとしているけれども、NFTはユーティリティであって、NFTを持っていることで、牡蠣をより長く楽しんでもらうことを目的にすることを一番に意識しました。既存のプロジェクトに永続性を持たせるため、牡蠣を食べてもらって、それをずっと楽しんでもらえることを一番大切にしています。

あとはユーティリティのところをいかに充実させていくかです。ユーティリティの例としては、NFTを持っていて、ECサイトで牡蠣を購入すると5%の割引が適用されることがあります。

密にコミュニケーションを取れるように、「フィジカル」でも「デジタル」でもコミュニケーションを取れるような「フィジタル」を意識しています。デジタル上では食べたあとにTwitterでツイートしてくれたら、牡蠣トークンを発行する仕組みにしています。そうすることで、トークンをほしいからツイートをする方がでたり、ツイートしたらみんなが絡んでコミュニケーションが生まれたりしています。つまり、信頼する方が発信していれば、他の方も買いたくなるような循環を作り出しているのです。ディスコードはあえて作らずに、オープンな設計にしているのも特徴です。

東京の大井町で開催されるマルシェ(マルシェ3.0)や牡蠣若手の会のイベントでは、ユーティリティとしてトークン配布や牡蠣のプレゼントをしています。また、マルシェ3.0では暗号資産決済も受けています。

NFTで変わったこと

コミュニティができたことは一番にありますね。毎週火曜日漁師さんとスペースをやったり、実際のイベントで漁師さんが来て、牡蠣をむいたりとかして、消費者に提供することが新しく誕生しました。ここで、リアルのコミュニケーションができたり、オンラインでも Twitter等で、漁師さんがツイートに絡むなどのコミュニケーションが生まれていますね。

今後の展望

Eat to Earn」を開始しました。
ECサイトで牡蠣を購入すると、購入金額に応じて牡蠣コインというトークンがもらえ、トークンを受け取ると牡蠣レベルというレベルが上っていく仕組みとなっています。レベルが上がるとNFTを*ミントすることができるようになり、発行されたNFTで割引や、ホルダーしか購入できないページを用意しています。

このEat to Earnの大きな特徴は「ミントにガス代が不要である」という点です。 牡蠣を好きな人が誰でもNFTを会員証として持つことを目指すためです。
ウォレットさへ作れれば、ガス代が不要な設計になっています。

また暗号通貨決済を導入しているので、2次流通でNFTが売れたらその売上で、牡蠣を買えるなどの牡蠣経済圏を作っていきたいです。

*2ミントとは、NFTを新たに作成・発行すること

牡蠣若手の会

まとめ

今回は実際に活動している方の生の声をブログとして記事にしました。
牡蠣NFTの取り組みは、なおきちさんの牡蠣に対する熱い思いと、社会人経験の中から培われたナレッジとスキルが、牡蠣の水産業さんの新しい挑戦をしたいという思いに結びつきかたちになっているものプロジェクトだと思います。
ここには、なおきちさんと水産業者さんの間で、密なコミュニケーションがあることで、事業の継続性が生まれていて、これからのより強固な「牡蠣経済基盤」ができる可能性があるとインタビューを通して感じました。また、牡蠣の水産業にNFTを取り入れたことで、顧客と直接繋がれるビジネスモデルや、デジタル上でのコミュニケーションに発展する可能性を秘めています。

今後も、NFTやDAO、メタバースといったWeb3に関連する技術を活用した地方創生の取り組みをリサーチしていきますのでお楽しみにお待ち下さい。また、なおきちさんは今回の作成にご協力いただきましてありがとうございました!(担当:中村一稀)


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次